1.雲粒子の非球形性を考慮した火星白色雲の光学的厚さの推定: 火星の観測される白色の雲はH_2OiceまたはCO┣D22iceからなると考えられている。我々は雲粒子の非球形性を考慮して反射光強度を計算し、観測された相対輝度との比較から雲の光学的厚さ、ひいてはその水蒸気含有量を推定した。対象とした雲は1982年京都大学飛騨・花山天文台で得られた青色フィルター写真に撮ったオリンパス山近くの雲(35°S、137°W)ヘラス盆地上空の雲(35°S、295°W)、タルシス地方の朝方に発生する雲(0°N、90°W)の3個である。非球形雲粒子による光散乱位相関数として今回はSassem and Liou(1979)による実験室での人工H┣D22┫D2O雲の光散乱データを用いた。同じサイズ分布をもつ球形粒子散乱に較べて、非球形の場合はback scatteringが大きくなるため、得られた光学的厚さは球形を仮定したよりも10〜20%が大きくなる傾向が見られた。各雲についての結果は次の通りである。(1)オリンパスの雲は正午頃観測可能になり、午後2時頃約0.5の最大光学的厚さに達し、夕方にかけて減衰する。(2)ヘラスの雲は1日中ほぼ一定の光学的厚さを保ち、その値は約1.0である。(3)タルシスの朝もやは朝方のLimbで最大の光学的厚さ2.0〜3.0を示し、次第に減衰し正午近くに消滅する。(4)これらの光学的厚さを水蒸気含有量に換算するとオリンパス雲で0.7μm、ヘラス雲で1.3μm、タルシスの朝もやで2.6〜4.0μm可降水量に担当し、バイキング・オービターによる水蒸気量測定と矛盾しない。なお、この結果は1989年1月にアリゾナ州ツーソン市で開かれた第4回国際火星会議で発表された。 2.1988年9月火星接近の際の写真観測:1989年夏の火星接近に際し、東海大学宇宙情報センター40cmの反射望遠鏡による予備観測を行なった。資料は現在解析中であるが、今後の惑星観測に充分活用できる見通しがついた。写真観測の他にCCD観測等を検討中である。
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