研究概要 |
1.放射輸達方程式のDiscreteーOrdinate解法の非均質惑星大気への適用: 雲粒子,ダスト粒子等を含む惑星大気からの反射光強度を計算する際には,惑星大気中の散乱物質の高度分布を考慮することが必要になる。昨年度は主として火星大気を扱ったが,火星大気は一般的に光学的に薄いため反射光強度の計算には均質大気モデルを仮定した。しかし光学的に薄い火星大気の場合でも、雲が火星の朝夕の端や南北両極の近くに観測される場合には雲の高さが反射光強度に影響を及ぼすことが考えられる。1989年度の解析では従来のDiscreteーOrdinate計算スキ-ムを惑星大気中の散乱物質の高度分布を考慮した非均質大気に適用できるように拡張した。非均質大気モデルを採用したことにより,新たに得られた知見は次のようである。(1)雲が火星像の端近くに観測される場合,大気がclearであっても雲の高度分布の影響は大きい。すなわち,雲の高度が高い程反射光強度は大きくなり,それに伴い計算から得られる雲の光学的厚さは小さくなる傾向にある。(2)この効果は火星大気(CO_2分子とダスト粒子からなる)の光学的厚さが大きい程よく効いてくる。(3)ただし,雲が火星像の中心付近で観測され、しかも火星大気がclearなときには,従来の均質大気モデルによる計算は良い近似を与える。結論として火星面でダストスト-ムが発生したり,火星像の端近くで雲が観測される場合,非均質モデルを適用する必要がある。 2.非球形微粒子による光散乱デ-タの収集・整理: 1989年度ではH_2O iceの非球形微粒子散乱の他にダスト,火山灰,黄砂等による光散乱デ-タのカタログ化を開始した。前記の計算スキ-ムの開発と合わせて惑星大気中の固体粒子光散乱の実用化を目指している。
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