研究概要 |
球形固体微粒子による光の吸収・散乱についてはMie散乱理論という厳密解があるが、非球形微粒子による光の散乱については統一的な理論が存在しない。本研究においては非球形微粒子による光散乱の特性を厳密に追求することはー先ず置いて、Sassen and Liou(1979)に代表される氷晶雲の実験室デ-タや火山灰等のエアロゾルの光散乱特性の測定にPollack and Cuzzi(1980)による半経験公式を適用することにより、非球形微粒子による光の散乱の現実的な解析方法を確立するとともに、その惑星大気の熱的構造におよぼす影響を調べることを目的とした。この目的を達成するために次の三つの段階を設定して研究を行なった。 (1) 非球形微粒子散乱に関するデ-タを収集し、Pollack and Cuzzi(1980)の半経験公式を組み合わせることにより、非球形微粒子による光の散乱位相関数を定める方法を確立した。 (2) これらの非球形微粒子を含む惑星大気からの反射光強度や大気内部のheating、coolingを計算するのに適当な放射輸達方程式の数値解法の開発を試みた。この目的のために我々は従来は一様大気のみに適用されていたDiscrete-ordinate法を非一様大気内の方位角依存放射強度I(τ,μ,ψ)を計算できるように拡張した。 (3) これらの結果を現実の惑星大気の問題に適用することが最終段階である。現在我々は火星白色雲の相対輝度測定にもとづいて、これらの氷晶雲の光学的厚さを推定し、ひいてはその雲の水蒸気含有量を推定することを試みている。火星の雲の光学的厚さや水蒸気含有量を地上観測にもとづいて定量的に定める試みははじめてのことと考えている。 今後の課題として、火星大気構造や極冠形成モデルにおけるダスト粒子雲粒子の役割を明らかにすること、および火星以外の惑星大気に同様の解析を適用することを計画している。
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