力学系アトラクタ-としてのインフレ-ションと宇宙の一様・等方性

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63540205
• 研究機関: 早稲田大学
• 研究代表者: 前田 恵一 早稲田大学, 理工学部, 教授 (70199610)
• キーワード: 宇宙論 / 一般相対性理論 / インフレ-ション / 非一様時空 / 量子宇宙論 / 数値的相対論 / 共形変換 / 宇宙初期

研究概要

本年度は、宇宙の一様・等方性を説明するために提案されたインフレ-ションの必然性について、解析的および数値的両面から研究し次の成果を得た。
1.初期に非一様・非等方に生成された宇宙が、実際にインフレ-ションを経験し現在の宇宙に進化できるのかどうかという主テ-マについては次のことを明らかにした。
(1)一様・非等方な宇宙関しては、ビアンキIX宇宙以外ではインフレ-ションが必ず起こることがわかっている。ビアンキIX宇宙についてはインフレ-ションが起こるかどうかは宇宙の初期条件による。そこで、インフレ-ションが起こる場合の初期条件が必然的なものかどうかを、量子論的観点から量子宇宙論を基礎に調べ、ビアンキIX宇宙に関してもインフレ-ションが自然な現象となることを示した。
(2)非一様な宇宙に関しては、その高い非線型性のため系統的な問題解明の方法が明らかでなく、まだまだ研究が不十分であるが、本研究では、古典論的観点から数値的相対論を使って、最も一般的な三次元非一様時空の問題を系統的に調べた。まず、膨張宇宙を取り扱うのに数値的相対論として適した定式化を与え、線型解析の範囲で非一様宇宙の一様化の機構を明らかにした。さらに、数値的相対論では膨張宇宙の場合においても時間座標の取り方が重要な問題となるが、どういうものがよいか解析的に検討した。この最も一般的な三次元非一様時空の問題は、今後一般相対論の研究において一つの大きな分野となることが期待される。
2.素粒子の統一理論の帰結として提案されているアインシュタイン理論をより一般化した理論においても、インフレ-ションが普遍的に存在するのかという問題を考察し、その普遍性を明らかにした。その方法としては、おもに共形変換を使い、一般化されたアインシュタイン理論を簡単化して解析を行った。

研究成果

• [文献書誌] 横山順一: "Quantum Cosmology with A Non-minimally Clupled Scalar Field" S.Hayakawa,K.Sato編(Universal Academy)“Big Bang,Active Galactic Naclei and Super Novae". 91-92 (1989)
• [文献書誌] 二間瀬敏史: "On the Chaotic Inflationary Scenario with Non-minimally Coupled Inflaton" S.Hahakawa,K.Sato編(Universal Academy)“Big Bang,Active Galactic Naclei and Super Novae". 73-74 (1989)
• [文献書誌] 前田恵一: "Inflation:Its Dynamical Aspect" S.Hahakawa,K.Sato編(Universal Academy)“Big Bang,Active Galactic Naclei and Super Novae". 51-63 (1989)
• [文献書誌] 二間瀬敏史: "Chaotic Inflationary Scenario of the Unverse with a Non-minimally coupled“Inflaton"Field" Physical Review D. 37. 399-404 (1989)
• [文献書誌] 前田恵一: "To wards the Einstein-Hilbent Action via Conformal Transformation" Physical Review D. 39. 3159-3162 (1989)
• [文献書誌] 前田恵一: "Inflation in a Renormalizable Cosmological Model adn the Cosmic No-Hair Conjecture" Physical Review D. 39. 2848-2853 (1989)
• [文献書誌] 横山順一: "Quantum Cosmological Generalify of Inflation in Anisotropic Spacetime" M.Kafatos編(Kluwer Academic Publishers)“Bell's Theorem,Quantum Theory and Conceptions of the Universe". 215-217 (1989)
• [文献書誌] 前田恵一: "Inflation and Cosmic No Hair Conjecture" D.G.Blair,M.J.Buckingham編(World Scienfific)“the Fifth Marcel Grossmann Meeting on General Relativity". 145-155 (1989)
• [文献書誌] D.H.Coule: "Wormholes with Scalar Fields" Classical and Quantum Gravity.
• [文献書誌] 横山順一: "Quantum Cosmological Approuch to the Cosmic No Hair Conjecture-The Case of Bianchi IX Space-time" Physical ReviewD.
• [文献書誌] J.D.Barrow: "Extended Inflationary Unverses" Nuclear Physics B.
• [文献書誌] A.L.Berkin: "Effects of R^3 and R R Terms on R^2 Inflation" Physics Letters B.