本研究計画の関連した主要な三課題(i)中性子過剰不安定核の構造研究のための理論開発(ii)典型例^<11>Liのもつ異常的性質の理解(iii)過剰中性子の関与する新しい運動モ-ドの典型としてのE1振動の検討について、以下に述べるように見るべき進展を得た。(i)については論文1、5で展開したクラスタ-軌道殻模型が、ゆるやかな東縛系としての中性子過剰核で有効であることを示し、^<11>Liの解析(論文7)の基礎となった。更にクラスタ-軌道法はαクラスタ-生成機構の解明にも有力であると考え、論文3、9で展開中である。(ii)については論文7で、異常な大きさの半径、中性子ハロ-状密度分布など実験で見つけられた^<11>Liの性質を再現できることを示した。更に論文8で中性子間の相関をより正確に取り入れることが^<11>Liの結合機構の解明に重要であることを示した。これらの研究により、^<11>Liの基底状態の異常性については現在の所最も進んだ理論的理解を得たものと思う。(iii)については、論文2、4、6で流体力学的模型、微視的模型を用いて芯部分と過剰中性子群との運動としての双極子振動に注目し、中性子過剰核でE1強度が低励起エネルギ-領域へ分散することを示すことができた。現在(i)で開発したクラスタ-軌道法を^<11>Liの^<208>Pbによる高エネルギ-電磁分解実験で得られた異常に大きな断面積の分析に適用し、有望な結果を得ており軟電気双極子振動と呼ぶべきモ-ドを初めて理論的に示すことができるものと期待し更に詳しい検討を続けている。 以上のように当初の予想以上に豊富な研究成果を得ており、今後の展開が楽しみとなっている。
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