研究概要 |
63年度は、今までに知られている解ける共形不変場の理論の深い構造、解ける理由等を通常の場の理論の枠組で理解することを目指すのであった。本年度においては、共形不変場の理論の基本的諸問題の解明に関して、いくつかの成果が挙げられた。まず、整数および半整数スピンを持つスーパープライマリーフィールドを構成する一般的な方法が得られ、Fateev達によって与えられたスピン3代数のスーパー化が不可能であることが、佐々木隆達によって示された。通常のVirasoro代数をその中に含む大きな代数、いわゆるK-N代数が最近kricheverとnovikovによって発見され、久保達は特にtorus上のK-N代数、Kac-Moody-K-N代数などの基本的な性質を見いだした。また、弦理論におけるBRSカレントの異常性について新しい知見が得られ、これに関連して26次元以外で弦理論は量子化可能であることが藤川達によって示された。これらの方法は、共形場理論に今後大きな進展をもたらすものと期待される。以上の他に、久保はリーマン面上での経路積分の一般化を試み、上原達はスーパーリーマン面上のカオス的性質について新しい知見を得た。 平成元年2月6日から8日の3日間にわたり、広島大学理論物理学研究所において研究会「Beyond Riemann Surfaces」を開催した。この会においてなされた講演は、位相幾何的場の理論、可解モデルとLink Polynomials,共形場の理論の大局的な構造、3,4次元多様体のトポロジイ,K-N代数、Kac-Moody Lie群、基本群とラプラシアン、そして3次元重力など多彩であった。共形不変な場の理論を越える有力な理論があるかとうか究明することが、この研究会の重要な課題であったが、数学者や物性物理学者などの参加を得て、ある程度の見通しと次年度への指針が得られたことは大変有意義であった。
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