分子科学研究所の放射光施設UVSORから得られるシンクロトロン放射光を後輝度のミリ波光源として用いたミリ波分光研究を行った。 先ず、UVSORに既設の分光装置をミリ波分光用に改良し、放射光が高輝度のミリ波光源であることを立証した。(昭和63年度の一般(C)の交付金による成果)。現在、エネルギ-にして2.5cm^<-1>(波長4mmに相当)以上の領域で分光研究が可能となっている。次に、こん装置を用いて半導体であるゲルマニウム(Ge)のミリ波吸収実験を行い、この物質が約5cm^<-1>にピ-クを持つ吸収帯を示すこと明かとした。Geは等極性物質であるので一次の光学フォノン過程が禁止であるので、これまではGeはミリ波領域に吸収を示さないと信じられてきた。本研究では更にミリ波吸収スピクトルの温度依存性を観測することによりこの吸収帯が2音子過程の内の差の過程によるものであることを明かとした。これらによりシンクロトロン放射光を光源とするミリ波分光法を開発するという本研究の目的がほぼ達成されたと思われる。今後は、ミリ波領域にのみ固有の感度を持つ検出器、例えば、液体ヘリウム3(He^3)で冷却したボロメタ-により更に有効波長領域を長波長側に拡張することが望まれる。
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