NiAs型人工格子として、強磁性であるMnSbと反強磁性であるCrSbとを組み合わせた人工格子を、2元rfスパッタ法で作製した。タ-ゲットとしては、MnSb側にMnSb熔解タ-ゲットをCrSb側にCrタ-ゲット上にSbテップを適当な枚数載せたものを使用し、基板はスライドガラスを用いた。MnSb層とCrSb層の各々の層厚を常に等しくしたまま、人工周期は50【.Angstrom】から200【.Angstrom】まで変化させた。X線回折の結果から、作製された全ての人工格子は、MnSb、CrSbともにNiAs型構造の〔110〕が膜面垂直に強く配向した繊維構造となっていることがわかった。しかしMnとCrの原子散乱因子が非常に近いため、人工周期性の確認はできなかった。また人工格子の磁化の温度依存性を測定したところ、低温での磁化がMnSb単層膜よりわずかに増加し、キュリ-点は人工周期の減少とともに減少する傾向がみられた。これらの現象の一つの原因として、相互拡散による界面での合金化が考えられる。また、100K及び180K付近で磁化の温度依存性に折れ曲がりが観測され人工格子化の効果として注目されるが、今のところ原因ははっきりせずその究明は今後に残された課題である。 NiAs型強磁性/反強磁性人工格子と比較する意味で、ホイスラ-化合物どうしの組合わせであるPtMnSb(強磁性)/CuMnSb(反強磁性)人工格子も2元rfスパッタ法で作製された。そしてその磁気特性として、低温での磁化がPtMnSb単層膜に比べ著しい増大を示し、また50K付近で磁化の温度依存性に折れ曲がりが見られる、というMnSb/CrSb人工格子の場合と類似した特徴が見られた。しかしPtMnSb/CuMnSb人工格子の場合、磁化の温度依存性に折れ曲がりが見られる温度がちょうどCuMnSbのネ-ル点(55K)に対応するのに対し、MnSb/CrSb人工格子の場合はCrSbのネ-ル点(720K)は折れ曲がりの見られる温度に比べはるかに高く、そのメカニズムは両者で異っていることが示唆される。
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