研究概要 |
本研究は,3d電子系に於けるヘビ-フェルミオンの可能性を探求し,その性質を調べることを目的としている.我々は,3d電子系に於いてもスピンのゆらぎが極めて大きい場合は,4f,5f電子系に匹敵するヘビ-フェルミオンが存在するという考えから,主としてラ-ベス相化合物の低温比熱測定を行なってきた.その結果,初年度にY_<0.97>SC_<0.03>Mn_2が電子比熱係数γ=150mJ/K^2molという3d電子系としては極めて重い化合物になっていることを見いだした.前年度までの結果から,3d電子系に於てヘビ-フェルミオンを示す物質探求の指針として,反強磁性相関の強い系であること,結晶構造が最近接の磁気モ-メントをすべて反強磁性的に配列することができない,いわゆるフラストレ-ティブな構造をしている系であることが考えられる.今年度は,以上の点に着目し,βMnーAl合金の磁性を調べている.Mnの高温相であるβMnは,急冷することにより低温でも得られるが,最低温度まで磁気秩序を持たないことが知られている.この結晶構造は上に述べたフラストレ-ティブな条件を満足しており,また,反強磁性相関も強い系であると考えられている.実際,この系の比熱は測定されており,γ=70mJ/K^2molという大きな値が報告されており,3d電子系のヘビ-フェルミオンとして期待が持てそうである.ところで,上に述べた考えに立つとこのような常磁性状態に非磁性不純物を添加してフラストレ-ションを乱してやれば,大きな磁気モ-メントが発生する可能性がある.そこでMnにAlを加えた系の磁化率を調べたところ,Al組成が20%を越えるとキュリ-ワイス的な振舞いを示し,磁気モ-メントが発生していることが明らかになった.このことはβMnがYーScMn_2と同じ機構でγがエンハンスされていることを示唆している.現在この系の電気抵抗と比熱の測定を行なっているところである.
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