研究概要 |
本研究は,3d電子系に於けるヘビ-フェルミオンの可能性を探求し、その性質を調べることを目的としている.我々は、3d電子系に於いてもスピンのゆらぎが極めて大きい場合は、4f,5f電子系に匹敵するヘビ-フェルミオンが存在するという考えから、主としてラ-ベス相化合物の低温比熱測定を行なってきた.以下に本研究で得られた主な結果を示す. 1.反強磁性に近い常磁性体Y_<1ーx>Sc_xMn_2はスピンの揺らぎが大きく,電子比熱係数γも150mJ/K^2molと3d電子系では最大であることを見い出した.この値はバンド計算による理論値の約15倍に大きく,典型的な5f電子系のヘビ-フェルミオンであるUPt_3の20倍に匹敵するエンハンスメントである. 2.強磁性に近い常磁性体,NbFe_2,TaFe_2,Y(Co_<1ーx>Al_x)_2のγはバンド計算の理論値の5倍程度大きくなっているが,Y_<1ーx>Sc_xMn_2ほどのエンハンスメントは示していない. 3.Muの高温相であるβMnは,最低温度まで磁気秩序を持たず,またγ=70mJ/K^2molという大きな値をもっている.このβMnにAlを加えた系の磁化率を調べたところ,Al組成が20%を越えるとキュリ-ワイス的な振舞いを示し,磁気モ-メントが発生していることが明らかになった.このことはβMnが局在モ-メントを発生しやすい状態にあり,ヘビ-フェルミオンとの類似性をもっている. 4.以上の結果から,3d電子系に於てヘビ-フェルミオンを示す物質探求の指針として,反強磁性相関の強い系であること,結晶構造が最近接の磁気モ-メントをすべて反強磁性的に配列することができない,いわゆるフラストレ-ティブに構造をしいてる系であることが考えられる.
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