研究概要 |
CeTIn(T=Ni,PbおよびPt)は、Fe_2P型六方晶構造をとり、高温で近藤効果を示し、低温で混成成果を反映した興味深い物性を示すことを報告してきた。すなわち、(1)CeNiInは低温で価数揺動状態を示し、(2)CePdInは、反強磁性(TN=1.7K)ヘビ-フェルミオン状態(rn700mJ/mole・K^2 at T=0.05K)を形成し、(3)CePtInは50mKまで磁気秩序も超伝導も示さないヘビ-フェルミオン化合物である。本研究において、我々はこれら3つの化合物系について単結晶を育成し、その物性研究を計画した。昨年度、CeNiIn単結晶の物性研究を報告した。今年度は、CePbIn単結晶をトリ・ア-ク熔解炉によるチョコラルスキ-法によって作成し、電気抵抗、帯磁率、熱電能および熱膨張の測定を各主軸方向に沿って行った。その結果、a軸方向の電気抵抗は60K付近にブロ-ドな山をもち、いったん減少した後さらに4K付近にシャ-プなピ-クをもち、その後急速に減少した。このような振まいは、近藤格子系に特徴的なものといえる。一方、c軸方向の電気抵抗はa軸方向のそれの約半分の大きさで、しかも2重ピ-ク構造がぼやけて不明瞭になる。こらは、近藤散乱がc軸よりa軸の方でより顕著であることを示しており、(CeNiIn系にみられたと同様、4f電子と伝導電子との混成効果が極めて異方的であることを暗示している。しかし、この混成効果の異方性は帯磁率に対しては、結晶場効果を補償する方向に働き、見掛け上帯磁率の異方性は極めて小さくなることを見い出した。さらに、CePdIn単結晶について超音波吸収の実験を行ない、弾性定数C_<33>,(C_<11>-C_<12>)/zおよびC_<44>の温度強弱を測定した。これらの温度依存は、基底状態が波動関数1±5/2<で与えられる二重項から成り、一次励起二重項準位1t1/2>は△_1=56Kに存在し、二次励起二重項準位1t3/2>は△_2=184Kに依存するとして説明できた。これらの結果は、LT'19で発表し、UPdInの結果と比較検討する予定である。尚、CePtIn単結晶は、融点が高Inの蒸発のため育成は困難であった。
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