EuTe単結晶中野^<151>Eu核と^<153>Eu核の核磁気共鳴を4.2Kにおいて21kOeまでの磁場中で[111]、[110]、[100]方向に対して観測した。^<151>Eu核に対し低磁場では2本の吸収線を観測した。これは各々EuTeの反強磁性共鳴の二つのブランチと結合したものである。しかしほぼ10kOe以上では2本の吸収線は一致し、1本の鋭い共鳴線を与えた。一方^<153>Eu核の信号は10kOeにおいて分裂しており、特に[100]方向では5本に分裂していた。吸収スペクトルはほぼ対称的であり分裂の大きさは1.3Kで0.205MHzであった。^<153>Eu核の核スピンは512であるので、分裂は原子核電気四重極相互作用によるものであり、原子核位置における電場勾配の存在を示す。EuTeはNaCl型の結晶構造を持ち、従ってEu電子の局所的対称性は立方的であることが予想され、またEu^<2+>イオンは4f^7の電子配置を持つため球形のS状態にあると考えられ、Eu原子の位置には通常電場勾配は期待されない。電場勾配が観測されたことは、Eu原子の周囲の電荷分布の局所的な球対称からのずれ、あるいはS状態からのずれを示唆する。S状態からのずれは、CaF_2中のENDORや1%Euを含むSrTe中のEu核のNMRの実験から予想され、電場勾配qへの寄与はe^2qQ/h=-2.0MHzであると報告されている。ここでQは^<153>Eu核の四重極能率である。この値は四重極分裂の大きさとして△Vq=0.3MHzに対応し、本研究の結果より大きい。この違いは、結晶構造のわずかな球対称性からのずれ(磁歪の効果)に帰せられ、Euの磁気モーメントが横たわっている(111)面間の距離が面内の原子間距離に比べて伸びていると解釈することによって説明できた。[111]、[110]方向に対するスペクトルが5本に分裂しなかったのは、これらの方向に対しては、4つの反強磁性的T-ドメインが等価でないためであり、上述の磁歪の効果によるものである。
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