研究概要 |
一般にf電子の状態には相対論的効果によって励起状態が混入することが知られている。Eu^<2+>イオンは基底状態がS状態であるためにその効果が見易く、概略な計算もあるが、詳細な研究はない。本研究においては核磁気共鳴(NMR)に出現する原子核電気四重極分裂の観測を通してこの効果を見ることを試みた。四重極分裂は核の位置に周囲から作られる電場勾配の大きさに比例しており、それは格子からの寄与と、自分自身の電荷の非対称からの寄与(相対論的効果)に分けられる。格子からの寄与は立方対称な構造の場合には非常に小さいので、立方対称のNaCl型を持ちEuが2価の形で入っているEuX(X=O,S,Se,Te)が研究に適している。このうちEuSとEuSeについては我々がこれまで^<153>Eu核のNMR信号に四重極分裂を見出し、その磁場や温度依存性を見て来た。本研究ではまずEuTeの単結晶球を用いて^<151>Euと^<153>Euの信号を液体ヘリウム温度で21KOeまでの磁場中で、特に我々の得意な定常法を用いて観測した。6kOe以上で^<151>Euの信号は1本の共鳴線であったが、^<153>Euの信号は5本に四重極分裂した。分裂の結晶方向依存性を観測したが[100]方向では対称な、それ以外では非対称な波形を見出した。これはTードメインが存在するために試料内に複雑な磁歪が生じたためである。分裂の大きさの磁場と角度の依存性は見出されなかった。しかし温度の上昇と共に急激に減少した。これはEuSやEuSeの場合と同様である。四重極分裂の大きさへの相対論的効果は結局我々の実験からは分離出来なかった。しかしこれまでのENDORのデ-タをもちいて、得られた結果を相対論的効果と磁歪の効果の合成として解析した。その結果EuTe内の磁歪についての情報が得られた。EuOについては分裂は見出されなかった。試料の純度が不足していたと思われる。
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