研究概要 |
伝導電子が人工周期、二次元性、新しい界面をどの様に感じるかを調べることを目的とした。多層膜の垂直方向の電気抵抗測定と、電流磁気効果の測定が現段階での人工格子系研究に重要である。まず垂直方向電気抵抗測定に関して述べる。この場合、電流方向長さが短く、逆に面積は広く抵抗測定は極めて困難である。見積られる抵抗値は〜10nΩで、通常の方法では電圧測定も不可能である。ミシガン州立大との共同で研究が進められ、かなりの部分が解決された。帯状のNb膜を多層膜試料を挟む形で、しかもお互いに交差させる形でスパッタ-する。各々のNb膜を電流端子,電圧端子とすることにより、上下のNb帯が重なった断面積部分の電気抵抗が測定できる。微電圧はSQUID電圧系で測定する。依然問題は残るが、Ag/Co系で次のことが分かった。電気抵抗は平行方向より常に大きく、積層周期依存性はほぼ平行になっている。これは、この系での比較的小さい残留抵抗は、界面での鏡面反射に因るのではなく、鏡面的透過によることが示している。これと同時に、電流磁気効果の測定が進められた。Al/AgはX線的に、かなり良質の試料が得られエピタキシャル人工格子の可能性を示している。しかし、界面での拡散・化合物生成は避けられず、電流磁気効果測定がその判定に、X線よりも敏感であることが示された。A/Ni系では、Hall効果により、界面異方性が見積られた。Ni厚の薄い試料での、電流磁感効果の測定は、界面での僅かな化合物生成と磁気的デッドレ-ヤ-の存在を示した。また、Cu/Ni系で電流磁気効果を系統的に測定することにより、積層周期の短い試料でのキュ-リ-温度の低下を、抵抗の温度依存で直接観測に成功した。また、磁気抵抗の積層周期依存性と、異常Hall効果の依存性に類似性を見いだした。これは、スキュ-散乱を考慮に入れるという点で、以後の理論的解析に重要な結果である。
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