研究概要 |
RFスパッタ法により作製した非化学定量鉄酸素系薄膜Fe_XO_<1-X>はX>0.5の領域で強磁性を示し、しかも垂直磁化膜となる。これはFeOの母相中に微細なアモルファス状の金属Feが針状に析出し、その長手方向が膜面に垂直方向に配向しているというモデルによって説明できる。^<1)>このような酸化物金属複合垂直磁化膜に対し、光学的な測定を行いその複素反射率から複素誘電率を求めることを昭和63年度の研究目的とした。 本年度の科学研究費(一般C 200万)により、可視域の小型分光器(日本分光 CTー10型)、光電子増倍管、回転パルスステージ(シグマ光機Σ401ー(3))等のコンポーネントを購入することができた。これらを、独自に設計製作した光学ゴニオ装置に組み込んで、波長400ー800nmの領域での分光偏光解析装置を完成した。この装置を設置する光学除振台も自作した。入射角の読み取りはマグネスケールを用い(1/500)°の精度で行い、その値をコンピュータに取り込む。偏光解析にはいくつかの手法があるが、我々は広い波長にわたる分光偏光解析を行う目的から、1/4波長板を用いないΔーtan〓法を採用した。ハロゲンランプ光源をでた光は偏光子によってS成分とP成分を等量含む直線偏光となって入射する。試料で反射された光は検光子、分光器を経て光電管で検出されその強度がコンピュータに取り込まれる。光源、光電管の波長依存性、及び分光器の偏光角依存性をあらかじめ計測しておき、測定結果を補正した。FeーO薄膜にたいする実験は金属相が増すに従って長波長側の吸収が増していくという結果を得た。誘電体母相中に微細金属粒が分散した系に対するマクセル〜ガーネットの理論を用い実験結果を解析した。大局的な様相はこれで説明がつく。^<2)>今後針状金属析出相の異方性をどのように解析にとりこんでいくかを考察する必要がある。 1)T.Mizoguchi,N.Akutsu and M.Akimitsu;J.Appl.Phys,(1987)3158 2)佐藤賢治、恒川栄一、川越毅、溝口正;1989年 日本物理学会年会講演予定
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