研究概要 |
酸化物高温超伝導体では電子スピンの揺らぎや電荷の揺らぎが、その超伝導発現機構を担っている可能性もあり、超伝導相に隣接している反強磁性相の性質、及びそれをもたらすスピン相関の知見を得ることはきわめて重要なことである。本研究においては、各原子サイトにおける微視的電子状態の知見を得るため核磁気共鳴法での核スピン緩和時間等の測定を行い、以下の成果を得た。 1.八面体Cu-Oを含む結晶構造の正孔注入型La_<2-x>Sr_xCuO_4系において、^<139>La-NQPを観測し、超伝導相と3D-反強磁性相の間に緩和率の異常を伴う新しい磁気秩序相を発見した。この転移点ては内部磁場の大きさは不連続に増大しかつ電気四重極相互作用も変化することが明らかになった。 2.La_<2-x>Sr_xCuO_4のx>0.12以上でCu-NQR信号を観測することに成功した。超伝導状態でT_1は急速にのび、スピンの揺らぎは抑えられる。このT_1の温度変化は他の酸化物超伝導体のそれと類似であり、酸化物系ての異常な超伝導を示している。一方x>0.3の正常状態ではT_1T=Const.のKorringa関係が広い温度範囲(1-100K)成りたっており系は金属的であることが解った。またxが小さいところでの1/T_1、1/T_2の大きな増大はx(q,ω)のq=Qの成分の増大によるものであろう。 3.電子注入型Nd_<2-x>Ce_xCuO_4系のx<0.1でCuの反強磁性がゼロ磁場NMRの観測で確認された。この系で最も注目されることは、x>0.14の超伝導を示す領域では電気四重極相互作用が極めて小さくなり、電子ド-プによる電子状態の変化は正孔注入型のそれとは大きく異なることが明になった。
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