研究概要 |
1.fおよびd電子系の高エネルギー分光理論におけるアンダーソン膜型を更に精密化し、fおよびd電子間、およびそれらと内殻正孔間のクーロン・交換相互作用やスピン軌道相互作用を考慮して多重項構造を求める理論を定式化した。この理論の特長は、fおよびd電子系の複雑な多重項ちおいても、原子内多重項理論と原子間電子移動効果を融合・統一したスペクトルの数値計算を可能にしたところである。この理論をCeO_2のCe4d吸収スペクトルに適用し、従来未解決であったスヒペクトル構造の成因を明らかにし、数年来の論争を終結させることに成功した。また、高温超伝導体のCu2P光電子スペクトルの多重項構造を解析し、原子間電子移動効果の異方性が特に重要であることを初めて明らかにした。 2.稀土類酸化物R_2O_3(R=La〜Yb)およびRO_2(R=Ce,Pr,Tb)の3d内殻光電子スペクトルを系統的に解析し、新しいスペクトル分裂の機構を提案した。また、同様な解析をアクチニド酸化物に拡張するための予備計算を行った。 3.稀土類化合物LaF_3,CeF_3,CeO_2の4f→3dおよび5p→3d電子遷移にともなう発光スペクトルを二次光学過程の定式化にしたがって計算した。発光スペクトル形状が、中間状態における4f・価電子間混成による緩和と内殻正孔の寿命による緩和過程の競合に影響されることを見出し、この現象を二次の過程に特有の量子力学的干渉効果によって説明した。 4.酸化物高温超伝導体の内殻光放出スペクトル、内殻光電子スペクトル、および内殻光放出スペクトルの計算を不純物アンダーソン模型を用いて行い、電子状態を記述するパラメターの推定を行った。また、光吸収スペクトルの偏光特性の解析から、ドープされた正孔の対称性に関する考察を行った。
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