研究概要 |
3次元S-N系 現実的な3次元S(超伝導体)-N(常伝導体)接合系について,界面近傍におけるペアポテンシャルの振舞いを明らかにした。不純物散乱や界面散乱が無視できるクリ-ン極限の状況では,表面に平行な波数保存則が近接効果に重大な影響を与えることがわかった。すなわちS側の有効質量がN側のそれに比べて重いとき,N側へ侵入できるク-パ-対が分布するフェルミ面領域が制限され,そのためク-パ-対の界面透過確率は著しく抑制される。 3次元クロ-ニッヒ-ペニ-系 3次元クロ-ニッヒペニ-系の1粒子波動関数を用いてゴルコフ方程式の積分核を解析的に求め,超格子周期内のペアポテンシャル分布と転移温度Tcを数値的に決定した。Tcは膜のくり返し周期dが大きいとき,その減少と共に一様S系のTcから単調に減少する。しかしdが電子波長の数倍程度まで減少すると,dの関数として振動することが明らかになった。これはブロッホ反射による干渉効果のため,フェルミ面での状態密度がdと共に振動するためである。 バリスティックな準粒子によるトンネル分光 平行平板電極および針状電極からのパリスティック電子の入射による,S-N接合界面でのトンネル分光法の基礎理論を発展させた。S-N-I-N接合系によるトンネル分光では,N領域における準粒子の共鳴状態やト-マシュ振動が系の幾何学的形状の影響を著しく受けるものの,ペアポテンシャルの近接効果によるプロファイルには,それ程敏感な反映はない。一方,針状電極を用いる場合,N領域での電子平均自由行程を適当に選ぶと,ペアポテンシャルの界面プロファイルがコンダクタンス対バイアス電圧の曲線に直接反映されることがわかった。 ジョゼフソン電流とアンドレ-フ反射の関係について,またジョゼフソン電流で誘導されるN領域の準粒子束縛状態について新知見を得た。
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