N-イソプロピルアクリルアミド(NIPA)ゲル、及びアクリルアミド(AA)ゲルについて、光散乱測定を中心とする研究を行い、以下の成果を得た。 1.NIPAゲルのスピノ-ダル分解(SD)機構の研究 多素子光検出器とパ-ソナルコンピュ-タとを組み合わせて、時間及び位置分離光散乱光度計を作製し、それを用いて表記ゲルのSDの動力学を調べた。前方散乱極大の時間依存性より、不安定になる温度及び不安定ゆらぎの波数が明確に異なる、2種類のSDが、一つのゲル中に共存することがわかった。これらは、ゲルの表面及び内部のSDにそれぞれ対応するものと考えられる。更に、現象論に基づく計算によって、ゲルには収縮相-膨潤相、収縮相-純溶媒、膨潤相-純溶媒、の3種のSDが起こり得る事が示された。 2.ブリルアン散乱による高周波弾性測定 NIPAゲルの体積転移点(33.6℃)近傍で表記測定を行い、GHz領域の音速及び吸収が共に転移点で大きな階段状変化を示すと言う結果を得た。 体積転移を示すゲルのブリルアン散乱の測定は、本測定が初めてである。 3.ゲル膨潤時に現れるパタ-ンの時間発展。 AA及びNIPAゲルにつき、表記パタ-ンの時間発展則を調べ、それが時間のべき乗則で非常によく記述できることが分かった。 4.ゲルに一様な張力を印可する方法の開発とそれを用いた測定。 (1)体積相転移の外部応力依存性と、その結果を説明する理論の開発。 (2)体積弾性率のソフト化、及び負のポアッソン比の実測。これらの結果の理論的解釈。 (3)一軸性応力に対する網目の弾性応答の変化を、光子相関法で測定したこと。
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