研究概要 |
本年度得られた成果を以下順に述べる。1.Pt(100)面、(110)面でのCO酸化反応と同様にPd(110)表面でのCOの酸化反応にも振動現象が見いだされている。Pd表面でのCO酸化反応において振動現象の生じる原因は、Pt表面の場合とは異なり、Pd(110)表面に解離吸着した酸素原子が表面下に移動することができ、この表面下酸素の存在する場合と存在しない場合とでCOの酸化反応速度の異なることにあると考えられている。ここでは、このような表面下酸素の効果をPd(110)表面でのCO酸化反応を記述するレ-ト方程式に考慮し、それに基づいてCO分圧や酸素分圧あるいは、表面温度などの外部変数によってCO酸化反応速度が変化する様子を調べた。その結果、実験で観測された振動現象を定性的に説明できることがわかった。2.H_2(D_2)/Cu,Pd系などの解離吸着系において、Vibrationally Assisted Stickingと呼ばれる現象や、Vibrational Heating in Desorptionと呼ばれる現象が見いだされている。ここでは、水素分子・金属表面系のポテンシャル・エネルギ-曲面上での水素分子のダイナミックスについて、反応経路の概念に基づくCoupled Channel計算を行い、解離吸着過程における分子内振動エネルギ-の役割や会合脱離してきた分子の振動状態分布を調べた。その結果、実験デ-タの定性的な説明のできることがわかった。3.金属表面吸着分子の振動緩和が金属表面電子系へのエネルギ-散逸によって生じる場合について、その緩和過程に現れる非断熱効果をケルディッシュ・グリ-ン関数を使って調べた。吸着分子の振動は、時間が長い場合は、時間に関して指数関数的に緩和するというよく知られた結果が得られた。さらに、時間が短い場合は、非断熱効果による振動を伴う緩和過程が見られることがわかった。
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