研究概要 |
本研究の縮退フェルミ液体^3Heのラマン散乱スペクトルにおいて、フェルミ縮退の特徴を明確に測定するためには、0.1Kの極低温で長時間安定に動作する光散乱用希釈冷凍器が必要となる。特に光散乱では、レーザー光を入射したり、散乱光を集光するために、光学窓を設置しなければならない。即ち、光散乱用のものは、輻射のために、通常のものに比べて高い冷却能力を必要とする。現在までのところ、光散乱用希釈冷凍器の開発の報告はない。従って、本年度はこの光散乱用希釈冷凍器の製作を精力的に行ってきた。製作は比較的簡単な構造から始め、順次改良して行くという方針をとった。熱交換器として連続型(チューブインチューブ方式)を使用した希釈冷凍器を動作させたところ、^3Heの循環量が40μmol/秒のとき、最低到達温度が0.15Kであった。この結果は冷却能力が不十分であることを示し、その原因として、(i)^3Heの循環量が小さいこと,(ii)熱交換器の熱交換効率が不十分であること,によると考えられる。(i)については、^3Heの循環量が900μmol/秒まで増大できる^3He排気システムを現在作製中である。(ii)については、ステップ型熱交換器の並用も考えており、適宜ステップ型熱交換器を作製する予定である。今後は、上記改良すべき個所を整備し、冷凍能力の向上をはかる。光散乱用の安定な希釈冷凍器の開発までもう一歩のところにあり、今後も精力的に装置開発をひき続き行い、早い機会に測定に移る予定である。
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