まず、すでに作成してあるNb_<1-y>Fe_<2+y>(y=0.002、0、-0.002、-0.004、-0.006、-0.008)について、T_N〜10Kの反強磁性と考えられるy=0と常磁性であるy=-0.008の試料について、Nb核の核磁気緩和T_1の測定を行なった。その結果、y=0の試料では、30K以下の低温では緩和の回復カーブが単一の指数関数では表せず、T_1が分布することが分った。y=-0.008の試料についても低温ですこしT_1が分布する。前者については、内部磁場が広い分布を持っていることと関係しているとを考えられる。 T_1の分布はネール温度付近でのスピンのゆらぎを調べるのにたいへん不都合であり、NbFe_2の反強磁性の詳細な研究のためにはまず、内部磁場、T_1の分布のない、あるいは、小さい試料を用意する必要がある。そこで、上の測定に使った試料(1000℃で1週間焼鈍)をさらに3週間焼鈍した。しかし、そのNMRスペクトルは、やはり内部磁場の広い分布を示していた。より高純度の原料を使って再度、いくつか試料を作ったが、結果は同様であった。 これらの結果はNbFe_2の反強磁性が組成比に対しても、磁場に対してもたいへん敏感であるために、普通は無視できるようなわずかな組成比のずれ、ひずみなどが大きく影響するためと考えられる。そしてこれは、この反強磁性が非常に弱く、不安定な状態にあるためと考えられる。そこで、角度を変え、NbFe_2中の元素の一部を他の元素で置き換えて、反強磁性を安定化させることを試みた。 Feを少量のCr、Co、Ni、Cuで置き換えた試料を作り、磁化測定、NMRスペクトルの測定を行った。その結果、いずれの場合も反強磁性は消えてしまうことが分った。現在、NbをMo、Taで置き換えた系についても研究している。
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