太陽電池の効率向上は、光吸収効率と、電子と正孔の抽出効率との両方を考慮しなければならない。前者は層の厚さの変化と関係があり、後者は吸収スペクトルの指数関数型の裾の幅によって支配される。これらの点を明らかにする目的で、本研究では、アモルファス半導体超格子の層の厚さの変化が指数関数裾の幅に与える影響を、理論的に調べた。得られた知見を以下にまとめる。 1.対角項の揺らぎの大きさの値が、井戸層の厚さの大きさに左右されずに一定であるとしても、井戸層の厚さの減少にしたがって、揺らぎの大きさにより効果がより効いてくるようになり、吸収係数の裾の幅は増加し、電子はより大きな局在性をもつ。 2.対角項の揺らぎの大きさの値と、井戸層の厚さのばらつきが、井戸層の厚さの大きさに左右されず一定である場合でも、隣接する井戸層へのトンネル確率の揺らぎに与える影響は、井戸層に厚さが減少するにつれて大きくなって、吸収係数の裾の幅も増加する。 3.現実の系では、対角項の揺らぎの大きさの値は井戸層の厚さの変化に無関係ではあり得ない。つまり、界面の効果やエネルギ-準位への影響のため、井戸層の揺らぎの効果は、井戸層の厚さの減少とともに顕著なものになり、これは対角項の揺らぎに反映される。 4.以上のモデル解析結果から、太陽電池の光電変換効率をあげるため、光吸収効率、電子一正孔対抽出効率の両者を改良するには、 (1)井戸層の厚さのばらつきをなくし、 (2)バリア層と井戸層の界面効果を抑え、井戸層内のトポロジ-的乱れを小さくすればよいことが結論される。
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