本年度は電子銃、ガス導入系、その他細かい準備からスタートした。電子衝撃を受けたモノシランガスの解離性励起過程により生成されるHやSi、Si^+等の原子からの発光、およびSiH分子からの発光を詳細にスペクトル分析した。本年度は、これらの原子や分子に対する正確な発光断面積を実験的に求めることを第一目標にして研究を進めた。可視域および紫外域における発光断面積の各値は「絶対測定」により求めた。光学系の絶対感度曲線は、NBS標準ランプにより精度よく校正されたハロゲンランプと光ファイバーの組合せからなる光源をチェンバー中心に設定することにより求めた。求めた感度曲線はHeベンチマーク断面積を用いて注意深くその妥当性をチェックした。衝突エネルギーが100eVにおけるHd断面積は、従来報告されている値よりも若干大きいことが解った。100eVにおける値は(4.7±0.5)×10^<-18>cm^2である。これとは逆にSiHの発光断面積は帯スペクトルについて強度を積分するとこにより求められた。Hs線がこの波長領域に重なっているが、その寄与はもちろん差引かれている。SiHに対する発光断面積の値は、測定誤差を考慮しても、従来の値より小さくなければならないということを示している。 真空紫外域における発光断面積は我々の測定が世界で初めてである。真空紫外域の波長感度校正はH_2分子の帯スペクトルの強度分布を測ることにより決定された。この波長感度曲線の信頼性はAr原子の共鳴線(4S→3P遷移)及び3S内殻電離に対する発光断面積の絶対値を測定することによりチェックされた。H原子のライマン系列について精度のよい発光断面積を測定することが出来た。
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