本年度は従来の予定通り計算機実験を行った。その内容を箇条書きにすると、1ペ-スメ-カ-の径と発生するタ-ゲットパタ-ンの波長の関係を調べること。2新しい種類の波を見つけること。3カオス振動子による反応拡散系を研究すること、の三点である。 この結果として次のような成果を得た。 1に関しては、振動子として主にファンデルポ-ル振動子x^^¨ーε(1ーx^2)x^^'+x=0を用い、また計算を一次元(半径方向のみ)と二次元の双方にわたって行った.この成果の最大のものは、ペ-スメ-カの径と発生する波の波長との関係において、ある径に対して波長の極小点が表われたことである。この結果は実験結果とよく一致し、この現象が普遍性を持つものであることを示している。次に2に関してはいくつかの新しい発見があった。そのうちの一つは‘尺取り虫'波の発見である。この波はファンデルポ-ル方程式のεの大きな緩和振動の場合に起るもので、波面が時間とともに連続的に進むのではなく、尺取り虫の歩みのように不連続的に進行するものである。この種の波は実際の実験において観測されてはいないが、反応拡散系に対して新たな知見を与えるものである。3として、カオス振動子の反応拡散系のシミュレ-ションであるが、カオス振動子としては、最も簡単なレスラ-モデルを選んだ。この系において、ペ-スメ-カ-領域の振動数が他の領域の振動数のfr倍であるように設定した.得られた結果としては、fr<1の場合において、実に振動子があたかもリミット・サイクルであるようなタ-ゲットパタ-ンが観測されたことである。恐らくこの発見は始めてのものであろう。この発見は、カオス的反応拡散系に関する新たな概念の形成につながるかも知れず、今後振動子の種類を変えるなどして、この現象の一般性を追求することが必要であろう。
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