本研究の目的は、不安定性・散逸性・分散性を含む非線形発展方程式におけるソリトン的挙動からカオス的挙動までの多様な振舞いを、空間的局在構造に基づいて記述することである。発展方程式の解の振舞いを相互作用する局在パルスの重ね合わせで近似すると、有限個の連立非線形格子振動方程式の形の“ソリトン格子モデル"が導かれる。このようなモデルとカオス現象との関係を明らかにすること、各種の散逸・分散型方程式の性質、強いカオスの空間的局在構造による記述、空間多次元系への拡張などの問題へ同様な手法を適用することを目的に研究を進め、下記のような結果を得た。 1.対称または非対称な振動型ソリトン格子モデルを対比して検討し、分散系と散逸系でカオスの異同を調べた。格子の非対称性が系の非保存的性質と関連すること、少くとも3個以上の振動構造をもつパルスが相互作用する系でカオス連動が可能であることが示された。 2.散逸・分散方程式である自励KdV-Burgers方程式とGinzburg-Landam方程式の解の性質を調べた。前者については、強分散性のときにカオス的となることを示し、後者については、カオス状態のスペクトルを厳密包絡ソリトン解の重ね合わせて近似することを試みた。 3.2次元散逸・分散方程式の初期値問題を数値的に解き、1次元解が常に不安定であること、弱分散性のときカオス的挙動を示し、強分散性のとき軸対称パルスが2次元的に配列する“準格子"が形成されることを示した。 4.2次元純分散方程式であるZakkarov-Kuznefsov方程式では、軸対称釣鐘型孤立波が基本解となること、この孤立波は単一では安定であるが、衝突に際しては振幅変化とさざ波発生を伴う“準ソリトン"として振舞うことを明らかにした。
|