1 脇谷は次の(1)、(2)を63年度中に行なった。 (1)通常使われている金属ビーム源の稼動時間は5〜10時間である。新しい金属ビーム源と交換するためには真空を破り、使用済金属ビーム源をとりはずし、ビームの軸合せ、配線のやり直しなど大変な手間のかかる手作業を5〜10時間毎にやらなければならない。これでは測定の能率が上らず、測定する気力を失なってしまう。この点を解決するために大気中からの駆動により真空中で回転出来る円板上に4個の金属ビーム源を設置し、真空を破ることなしに次々に切りかえながら使用し、稼動時間の大幅な増加をねらった金属ビーム源を設計し、製作した。現在性能テスト中であるがほぼ設計通りの性能をもった金属ビーム源が得られ、更に大幅の稼動時間の増加がみられた。今後はこのような型のマルチステージの金属ビーム源がこの分野の研究者に多く使われるものと考えられる。 (2)一般に電子衝突エネルギーが低くなり原子のしきい値に近付くとオージエ電子の強度は弱くなり検出が困難となるが、我々はXe、Kr、Ar原子からのしきい値付近の強度の弱いオージエ電子を検出できる技術を確立し、美しいスペクトルが測定出来るようになった。平成元年度にはXe、Kr、Arの代りに63年度に製作した金属ビーム源に電子衝突スペクトロメーターを取り付けて4d電子やその他の内殻電子の励起断面積を測定する予定である。 2 高柳は上記予備実験と平行して、測定の高効率化・測定時間の短縮化を計るため、散乱電子、放出電子および防出光の検出器としてマルチチャンネルプレートを用いた位置敏感検出システムを開発し、Xe、Kr、など稀ガス標的を用いて10分の1の測定時間で美しいスペクトルを測定出来るようになり当初の目的を達した。
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