1.脇谷は平成元年度に次の実験を行なった。 主に稀ガスビ-ム用に開発された現有の電子衝突スペクトロメ-タ-に金属ビ-ム源を取りつけ予備実験を行ない、次のような結果が得られた。4d電子の関与するオ-ジェ電子スペクトルを測定することが出来た。しかしながら金属ビ-ム源から吹き出した金属原子が電子スペクトロメ-タ-の電極や絶縁物に付着し動作が不安定となり、定定して動作する時間が短いことが分った。そこで電子銃部、金属ビ-ム源部、電子エネルギ-分析器部の三部分をそれぞれ別々に真空排気(差動排気)出来るように設計しなおし、現在組立中である。このように差動排気出来るようにすると、電子銃部、電子エネルギ-分析部は金属カバ-でおおわれているため、金属原子が付着することなく長時間安定して動作するものと期待している。平成2年度にはこの新電子スペクトロメ-タ-を動作させ内殻および副殻電子の関与する共鳴電離を系統的に測定する。 高柳は上記実験と平行して、測定の高効率化・測定時間の短縮化を計るため、散乱電子、放出電子および放出光の検出器としてマルチチャンネルプレ-トを用いた2次元の位置敏感検出システムを開発し、Xe、Krなど稀ガス標的を用いて通常の1/10の測定時間で2次元のスペクトルを測定出来るようになり当初の目的を達した。この検出システムを上記の電子スペクトロメ-タ-の検出部にとりつけ測定時間の短縮化を計りたい。
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