研究概要 |
本研究の目的は地球内部の3次元不均質構造を長周期デジタル地震記録から逐次線形インバ-ジョンで求めることである。インバ-ジョンに必要な理論波形とその偏微分係数は変分法に基づいて求める。今年度の研究成果は次の4点にまとめられる。(1)S波速度構造の内、比較的長波長の水平方向不均質構造にパラメタを限って、実際のデ-タを使ってインバ-ジョンを行い、我々の方法の実行可能性の検討を行なった。結果は、我々の方法は内部構造の推定に有効であり、かつ実際的な方法であることが分かった(Hara et al.,submitted)。この結果は平成元年度春の日本地震学会、及びイスタンブ-ルで行なわれた1989年のIASPEIで発表した。水平方向不均質モデルを初期モデルとした内部構造インバ-ジョンは本研究が初めてのものである。(2)我々の方法は非線形逆問題を線形化して逐次的に解く方法なので、得られる内部構造モデルは初期モデルの選択に依存する可能性がある。そこで、我々は初期モデルのみを変えてインバ-ジョンを行って、我々の方法の初期モデル依存性について検討した。インバ-ジョンの結果は2つの初期モデルの構造を近づけることが分かった。これはわれわの方法の初期モデル依存性が小さいことを示唆するものである。この結果は秋の日本地震学会、及び1989年のAGU Fall Meetingで発表した。(3)インバ-ジョンで求めるパラメタを増やし(水平波長で10000kmまで。深さ650kmまで。深さ方向の変化は4つのパラメタで表現する。求めるパラメタの総数は96個。)、デ-タを増やしてインバ-ジョンの1回目の反復を行なった。この結果については平成2年度春の日本地震学会で発表する予定である。(4)Born近似を使った理論波形の偏微分係数の計算法と、固有周波数、固有関数の偏微分係数を使った計算法の等価性について示した。(Geller et al.,1990;Geller et al.,submitted)。
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