(1)昨年度の予備的調査に続き、テキサス大学の田嶋博士と共に、表面波質点運動の3次元表示を工夫して、GDSN(アメリカの高精度デジタル地震計網)の長周期地震記録を精密に調べた。太平洋を伝播する周期30秒前後の表面波が、海洋上部マントルに地震波速度異方性によって特定の周期、特定の方向で、異種表面波モ-ド間の分散曲線が接近し位相速度の差が0.05km/s以内になると、モ-ド間カップリングが生じ、表面波の質点運動の方向がレ-リ-波とラブ波の中間的なものになることにたいして、極めて良好な肯定的結果をえた。この成果を、田島博士と共に、アメリカのGeophysical Research Letters(1989年、Vol.16、p.1051-1054)に発表した。これは、海洋上部マントルにおける大規模異方性存在の「直接的」証拠といえる。上部マントルの大規模地震波速度異方性は、マントル対流に伴う岩石の塑性流動によって生じることが分かっており、上記のような海洋上部マントル地震波速度異方性の検証は、海洋プレ-ト下のマントル対流を間接的に検証したことにもなる。 (2)GDSNのCD(コンパクトディスク)から地震記録を読み取り、最終的なトモグラフィ-に用いる太平洋を横断する表面波の分散曲線を集積しつつあるが、大変面倒な仕事で手間取っている。 (3)理論的な検討の結果、表面波の異方性と、地球自由振動のスプリッティングの取扱には大きな隔たりがあり、いますぐ両方を同時に扱うには無理があることが分かったので、地球自由振動は扱わないことにした。
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