昨年度に引き続き分析システム及び試料空気の分析を実施した。 CH_4濃度は明瞭な季節変化を伴って増加しており、1989年の平均的増加率は11ppb/yrであった。この増加率は昨年より若干大きくなっているものの、1980年初頭の値より明らかに小さくなっている。原因としては、初期の測定が系統的ではなかった、CH_4の放出源強度の弱まり、消滅源強度の強まりが考えられる。日本上空の対流圏CH_4の年平均濃度は下層で高く、上層に向かって低くなり、対流圏最下部と最上部との差は約20ppbであった。また、対流圏最下部の値は昭和基地の結果より約125ppbほど高かった。これらの事実はCH_4の強い放射源が北半球高緯度に存在していることを示唆している。 日本上空の対流圏CH_4の季節変化は高度と共に減少するが、対流圏上部で再び増加する。対流圏下部の季節変化は4月最高濃度、7月に最低濃度をしめすが、上部の変化はこれとほぼ逆位相になっている。対流圏上部の季節変化は冬季から春季にかけてのジェツト気流付近からの濃度の低い成層圏大気の侵入と夏期における高緯度の濃度の高い空気の輸送によって生ずると考えられる。昭和基地の季節変化は3月に最低濃度、10月に最高濃度を示し、振幅は約30ppbであった。 CO濃度の分析デ-タはばらつきが大きく、本年度はその原因を詳しく検討した。その結果、用いたカラム充填剤に微量な有機物が含まれており、試料空気の酸素と反応し新たなCOを発生することを発見した。そこで特殊なカラムエ-ジング法を考案し、この問題を解決した。現在、保存中の試料空気を再度分析している。
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