山岳があると、台風や低気圧の接近にともなって特定の場所に降水が停滞して持続する事がある。集中豪雨をもたらすような激しい降水現象は、山岳と対流性積雲との相互作用による事が多い。このような地形性降水を研究するために、数値モデルによるアプロ-チを試みた。 昨年度は、従来ある(地形に沿う座標系でかかれた)支配方程式系および地形性降水に関与する物理過程を整理し2次元の対流数値モデルを作ったので、今年度は、このモデルを2次元から3次元へ、また氷を含まない暖かい雨モデルを氷を含む雲物理モデルへと拡張する努力をした。これによって、より一般性・汎用性のあるモデルとなり、よりリァリスティックな現象に応用できるようになった。ただしこの作業は現在も進行中で、まだ研究成果は多くない状態である。 3次元対流数値モデルを用いた研究として、アフリカ大陸の西海岸付近でよく発生するスコ-ルラインのシミュレ-ションを試みた(大学院生張泉湧氏との共同研究)。この場合は、山岳をいれなかったので地形性降水の現象ではないが、3次元対流数値モデルをチェックするために行った。ここでは、COPT81特別観測でフランスのグル-プが観測した熱帯スコ-ルラインについて、トップラ-レ-ダ-で観測されたその詳細な内部構造(メソ対流系の流れや動きおよびその中でのセルの発生・発達)をモデルで再現しようとした。シミュレ-ションでは新しいセルが古いセルの間で前面に発達して面白い結果を得たが、しかしながら、詳しい観測デ-タだ手元にないので細かい比較まではできなかった。
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