山岳があると、台風や低気圧の接近にともなって特定の場所に降水が停滞して持続する事がある。集中豪雨をもたらすような激しい降水現荒は、山岳と対流性積雲との相互作用による事が多い。このような地形性降水を研究するために、数値モデルによるアプロ-チを試みた。 まず昨年度は、従来ある(地形に沿う座標系でかかれた)支配方程式系および地形性降水に関与する物理過程を整理した。この時に検討した結果を別冊「地形性降水の数値モデルの解説」にまとめた。これに基づき、2次元の対流数値モデルを作り、1987年6月6日早朝に沖縄本島で観測された山岳によって発生したような降水システムのシミュレ-ションを行った。シミュレ-トした降水システムは、停滞期と移動期の2つのステ-ジを持ち、山岳による影響が再現された。このような変化は観測でも見られた。特に停滞期が生じたのは、システムとしては風上側に移動としようとするのを、システムが山岳の風下側に発生したため、山岳でブロックされて移動できなくなったためである。次に山岳の高さに対する感度実験を行い、逆に山岳の高さが低い場合はシステムは移動するだけであり、山岳の高さが高すぎるとシステムは停滞するだけであるという事がわかった。このように、地形性降水のいくつかの特徴がこの実験で明らかになった。 今年度は、このモデルを2次元から3次元へ、また氷を含まない暖かい雨モデルを氷を含む雲物理モデルへと拡張する努力をした。これによって、より一般性・汎用性のあるモデルとなり、よりリァリスティックな現象に応用できるようになった。ただしこの作業は現在も進行中で、まだ研究成果は多くない状態である。
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