既往観測資料のうち1972年以降の水産関係試験研究機関による膨大な観測資料が日本海洋デ-タセンタ-に未収録となっている。これを含めるか否かは解析結果にも大きく影響すると考えられるので、これを主に現在得られるすべての観測資料を収集、解析する作業をすすめた。このうち、海面と10m深の水温、塩分については、緯度経度1/2度毎に整理する作業をほぼ終えた。日本海の観測資料は、空間的にも季節的にもかなりの偏りがあるので、これらの影響を考慮した解析法(平均値のとりかた、調和解析の方法等)の検討も行った。 2.現在までに得られた観測資料に基づいて、海面(0m)と深さ10mの密度及び表層混合層の特性の分布を調べた。沿岸域においては、降水や河川水の供給により、ごく表層のみ低塩分となることがあるので、表層混合層は複雑な構造を示す。2月から3月にかけて、40°N以北、138°E以西では、時折600m以深に及ぶ表層混合層が形成される。その塩分は日本海固有水の塩分よりやや高く、水温は1.00℃以下でかなり高いが、密度は日本海固有水のそれに近く、この表層水が沈降と混合とにより、日本海固有水へ変質する可能性が大きい。 3.今後は、まず日本海の表層水の特性に関する解析を終え、水温、塩分分布の海域及び季節ごとの変動特性と経年変動を明らかにした後、特に塩分の海面水温及び表層混合層の厚さに及ぼす影響について考察する。さらに、上記の解析結果及び地衡流の分布に基づいて、日本海における熱及び淡水の輸送量の空間分布及び季節変動を求める計画である。
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