研究概要 |
1.富山湾以北の本州西方では、通年、海面の塩分が低く、この海域では、河川水の流出の影響がきわめて大きい。一方、北海道北東方沖では、7,8月を除き、34.0以上の高塩分域がみられる。夏から秋にかけて東シナ海から流入する低塩分水は、9月には若狭湾以西の北緯36〜38度に達するが、以北にはほとんど影響せず、沿岸域を除く淡水輸送量も南部の夏から秋にかけてを除いてはかなり小さい。秋から初冬にかけては、山陰西部以西の日本海南西部の大部分で海面と10m深とで密度が逆転するが、冬になって、対流や混合がすすむにつれて逆転は少なくなり、混合層が厚くなる。冬季における海面密度の最大値は、日本海の北緯40度以北の中西部にみられ、また、混合層が500mにも達すること、塩分が34.05以上であることから、日本海固有水生成の条件にほぼ適合するものと考えられる。日本海南西部の対馬暖流域では、海面の塩分が10m深のそれより大きいとき密度逆転がおこる。また、本州北部西方の低塩分域でも、秋から冬にかけて、水温の逆転だけで表面の密度逆転を生ずる。 2.日本海で海底近くまで観測の行われたときの資料に基づくと、地衡流計算の無流面は、多くの場合1000mよりやや深いところにあると考えられる。熱流量を地衡流による移流として算出したが、1000m以深の輸送量がごく小さいため、海面から1000mまで積算した場合と、海底まで積算した場合とで、ほとんど差はない。しかし、地衡流計算の基準面のとり方により著しく異なるので、1000mより浅くとるのは適当ではない。鉛直断面熱輸送量に基づく熱収支では、日本海南部では春から夏にかけては流出(海水を昇温させてもなお過剰の熱が出ていく)、秋にはその逆となる傾向がみられる。
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