冬季北西太平洋域層状雲の氷晶化度の実態とその発生機構を究明する一環として次の研究を行った:(1)前年度冬季志賀高原で沈降法やインパクタ-を利用したレプリカ法で得た氷晶濃度、衛星の赤外画像による雲頂温度などの資料を解析した。その結果、雲中の氷晶濃度はこれまで観測されている氷晶核濃度より著しく高いことが見出された。この結果から、日本付近の雲内でも何らかの氷晶の増殖過程が起っている可能性が考えられる。(2)前年度雲粒や氷晶を直接法で測定する小型で精度の高いビデオカメラを利用した航空機搭載用雲粒子直接測定装置の開発に取組んだ。今年度はこれを実用化させるため、夏季乗鞍岳で実際の雲についての予備実験を行った。その結果、モニタ-上に雲粒子の鮮明な映像が映し出されるなど、航空機観測への利用の目途が立った。また、この実験から試料捕集面部への送風空気の加熱の必要性、吸引流量の範囲など改良すべき点も見出された。(3)今年度の冬季、奄美大島近辺上空で雲の性状と氷晶化度に関する航空機観測を行った。また、夏季和歌山県串本沖上空で雲粒分布の観測を行った。奄美大島における観測では、雲の過冷却状態が予想以上に激しく、過冷却雲粒が雲粒子直接測定装置の取込口に着氷したため、氷晶に関する詳細な資料を得ることができなかった。しかし、雪結晶の目視観測などから、雲粒の粒度や雲水量は雲が氷晶化すると大きく変質し、水雲に比べてかなり小さくなるなどの興味ある結果が見出された。
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