琵琶湖をはじめとする湖底堆積物などの永年変化を系統的に調査し、過去数十万年間にの古気候変動について、特にどのような周期性が卓越しているかを研究してきた。 国内や海外における過去数十万年間の古気候変動に関連する各種堆積物資料(琵琶湖の粒度分析資料、南極氷床コアからの二酸化炭素・温度変動資料、米国ネバダ州からの陸上水圏内の酸素同位体資料、深海底コアからの酸素同位体資料のほか、それらの関連資料)の収集を行ってきた。またこれらの資料を時系列デ-タとして系統的にデ-タベ-ス化した。 上記の各種資料に対して、時間領域テストやパワ-スペクトル解析などの統計的解析を行った。さらに、新たに開発した「拡張調和解析法」により、今まで不十分な結果しか得られていなかった低周波領域の卓越周期の厳密な値だけでなく、卓越周期の振幅および位相の値がきわめて高い精度で求められた。 こうして得られた結果を比較検討することにより、「地球軌道の長周波摂動に伴う日射量の永年変化が、過去数十万年間、つまり第四紀後期更新世の古気候変動に顕著な影響を与えてきた」というミランコビッチ理論の確認がなされた。 これまで、第四紀の気候変動を特徴づけられている氷期-間氷期の大きな時間スケ-ルをもつ気候の遷移をもたらしてきたのは、十万年周期であると考えられてきた。しかし、上に述べた厳密な統計解析により、これらは12-14万年周期の上に6-7万年の周期成分が重なって生じていることが今回初めて判明した。
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