豊後水道に発生した沿岸の湾に水温の急変を起こす急潮について、その構造、発生周期、発生機構、海洋環境に及ぼす影響なでを、現地での長期連続の水温モニタ-、航走によるCTD観測、既存資料の収集・解析などによって調べた。その結果以下のことが明かとなった。 (1)豊後水道の急潮は、太平洋よりの低密度の暖水塊の流入有象であり、基北的には密度流である。暖水塊は水道の東半分を岸を右に見て浸入する。(2)急潮は大潮-小潮の潮汐変動に同期し、主に小潮の頃に発生する。(3)急潮は夏期を中心に発生し、海面が冷却される時期には発生しない。冬期でも2月以降は稀に発生する。(4)急潮の発生は鉛直混合の強さの変化に支配され、鉛直混合の弱い時期に発生する。しかし、この鉛直混合の期果のみでは、急潮の発生を定量的に説明することはできず、この効果に加え何か別の効果が働いている可能性が強い。(5)豊後水道の急潮の強さの変動は外洋の擾乱によって影響され、豊後水道南部に外洋から暖水が供給される時期が小潮の頃に重なると、強い急潮が発生する。(6)急潮は、豊後水道東岸の宇和海沿岸で行われている養殖に対し、水温急変による養殖魚介の衰弱や弊死、黒地系の貧栄養の水塊の流入による生産力の低下などの悪影響を及ぼすと同様に、湾の海水交換を促進することにより水資を保全し、大規模な養殖を支える基本的な要因ともなっている。 今後は急潮の発生機構に関し、地球回転の効果を考慮した検討が必要と思われる。
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