地球の極域から放射されている地球キロメトリック放射(AKR)のスペクトラムは、オーロラ粒子加速域の垂直構造とその運動を如実に物語っている。本研究では、まず科学衛星「じきけん」によって観測されたAKR放射のスペクトラムをディジタル処理し定量的に強度変動の時間変化をとらえ、ディジタルダイナミックスペクトラム処理を行った。このデータをベースに、このデータと同時期に観測された米国衛星データ、及び地上極域磁場構造データとのつき合わせを行い、オーロラサブズトームの発達とAKR放射活動の時間的空間的対応の研究を行った。また南極昭和基地におけるロケット観測データの解析を行い、極域電離圏におけるプラズマ波動とオーロラ粒子との相互作用のプロセスを実証的に研究した。以上の研究の実施により下記の成果が得られた。 (1)AKR放射域の発達は、1点で発生し伝搬しながら加速的にひろがるものではなく、いくつかの発生域の核となる部分が磁力線に沿って分布しこれらが急速に発達してオーロラに伴うAKR放射域を形成する。 (2)AKR放射強度の時間発展は、サブストームのオンセット時には2dB/秒の速度で生長することが明らかになった。 (3)AKR放射域の中心高度はサブストームの進行とともに高度を下げ、100Km/Secのみかけの速度で移動する。 (4)AKRのスペクトル構造にはfine Structureが存在するが、これらは3つのタイプに分類され、それぞれサブストームの発展と密接に関連していることが明らかにされた。 (5)オーロラ粒子との相互作用によって生成するプラズマ波動のうちZモードの波動は極域電離圏にかなり一般的に存在する波動であることが示され、AKRの源となる波動であることを支持する結果が得られた。
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