本研究の目的は人工衛星で観測された現象をテスト粒子シミュレ-ションを用いて解明することである。平成元年度の研究で解析した主な現象は、科学衛星EXOSーDが極域で観測した上昇イオン流(UFI)とイオン・コニックスである。科学衛生EXOSーDは、平成元年2月22日鹿児島宇宙空間観測所から打ち上げられた衛星で、最新の観測器により多くの新しい観測結果が得られており、デ-タ処理が急務とされている。観測デ-タのうち特に1989年8月28日に観測された上昇イオン流(UFI)現象と7月24日に観測されたイオンコニックスに焦点をしぼり、これらの現象の発生のメカニズムを検討した。 8月28日に観測されたUFI現象では、UFIが現れない時は電子のピッチ角は対称的な分布であったが、UFIが出現すると非対称に変化した。これは衛星高度より下方に平行電場が存在していることを示唆している。テスト粒子シミュレ-ションを用いて電子の軌道を計算した結果、上昇電子のピッチ角分布から推定される加速域のポテンシャルはUFIのエネルギ-と一致することが確認され、衛星下方に加速電場が存在することを証明した。更に、電子のミラ-ポイントの高度は電場、加速域の距離ではなく、加速域の電位差で決まることを示した。7月24日のイオンコニックスではイオンの質量とピッチ角の分散が観測された。すなわち、質量の小さいイオンは高緯度側に、質量の大きいイオンは低緯度側で観測された。また、ピッチ角分布の中心も低緯度に移るに従い90^。から30^。へと変化した。テスト粒子シミュレ-ションによる検討結果は、dawnーtoーdusk電場により質量の大きいイオンほど低緯度側へE×Bドリフトされたため質量分散が起こることを示した。さらに、イオン加速が起きた高度が衛星高度付近の高高度から低高度側に分布したためピッチ角が変化したことも明らかにした。
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