本研究ではテスト粒子シミュレ-ションの手法を用いて人工衛星で観測された物理現象の解明を試みた。解折した現象は、ジャコビニ彗星の近傍で観測されたホイッスラ-波と、極域で観測された上昇イオン流(UFI)とイオンコニックスである。以下に主要な解折結果を示す。 1.ジャコビニ彗星の近傍で観測されたホイッスラ-波の励起現象。本研究では励起過程として彗星から放出された水イオンによるサイクロトロン共鳴の可能性を検討した。その結果、水が電離した時点では共鳴速度より遙かに速い相対速度を持つため共鳴を起こさない。しかし一部の水イオンのピッチ角が大振幅MHD波により変化し、ホイッスラ-波にトラップされる。さらに、トラップされた一部のイオンはMHD液まで押し戻され、その結果ホイッスラ-波にエネルギ-を与えることをテスト粒子シミュレ-ションは明らかにした。 2.UFIのエネルギ-と電子のピッチ角分布からの加速電場の推定。8月28日の観測では、UFIが観測されていない時、電子のピッチ角は対称的な分布であったが、UFIが出現すると非対称に変化した。シミュレ-ションの結果、上昇電子のピッチ角分布から推定される加速域の電位はUFIのエネルギ-と一致することが確認され、衛星下方に加速電場が存在することを証明した。 3.イオンコニックスにおける質量・ピッチ角分散。7月24日のイオンコニックスにおいて、軽いトラップされたイオンは高緯度側に、上昇する重いイオンは低緯度側で観測された。計算結果は、dawnーtoーdusk電場により質量の大きいイオンほど低緯度側へE×Bドリフトされ質量分散が起こることを示した。さらに、イオン加速が起きた高度が衛星高度付近の高高度から低高度側に分布したためピッチ角が変化したことも明らかにした。
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