1.スチルベンの77K剛性溶媒中の光異性化反応をESR法で詳細に調べた。トランス型からシス型へは光異性化しにくいが、シス型らかトランス型へは容易に光異性化がおこり、シス型のESR信号は観測されない。また、スチルベンの光異性化は励起-重項状態からのみでなく、最低励起三重項状態からも進行することがわかった。 2.4、4[^<1]>-ジアザスチルベンの励起三重項状態は無リン光性かつ短寿命であるため、時間分解ESR法が数少ない有力な研究方法である。エキシマーレーザーをパルス光源とする時間分解ESRの実験を行い、すべてのESR共鳴磁場を測定することに成功した。また、延伸高分子膜中に対象分子を部分配向させた試料を用いて、ESR信号の帰属を行った。その結果、最低励起一重項状態から三重項状態への項間交差は分子平面内の二軸方向の副準位に等しい割合で起こり、分子面外方向の副準位へは最も起こりにくいことがわかった。従って、4、4[^<1]>-ジアサスチルベンは最低励起三重項状態において、平面からあまりずれていない構造をとると結論された。 3.種々のニトロおよびジニトロナフタレンの最低励起一重項状態から励起三重項状態への項間交差の副準位選択性およびゼロ磁場分離定数を時間分解ESR法で調べた。特に、短寿命のために従来の定常状態ESR測定からは得られなかった。1、4-ジニトロナフタレンのすべての共鳴信号が観測され、ゼロ磁場分離定数が求められた。本研究から得られたゼロ磁場分離定数および寿命は、近接する3ππ[^<*]>状態と^3nπ^*状態との間に強い振電相互作用があることを示している。
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