研究概要 |
固体中に存在する構造の"すき間"がとくに数オングストローム程度のサイズをもった一次元的細孔とみなせる場合に、その媒質中に取り込まれた分子が分子運動や集合状態に、バルクとは違ったどのような特徴が表われるかが大きな関心である。本研究はとくに媒質としてゼオライト、気体分子として酸素を取り上げたものであるが、測定方法や試料の処理などが同じという実験上の理由で予備実験を特殊な銅化合物{トランスー1,4ーシクロヘキサンジカルボン酸銅(II)}について先ず行った。この化合物もゼオライト同様低温で大量の気体分子を吸収し、磁化率測定の結果一次元的性格をもつとされているものである。ところが窒素や酸素などさまざまな気体を吸収させた系について熱容量測定を行った結果、まさに目的としていた興味深い挙動が見い出されたので、これを調べるために吸収量を変えるなどして本年度の大部分の時間を費やす結果となった。3〜100Kで行った熱容量測定の結果をまとめると、 1.いずれの気体分子もバルクの場合ほどではないが、吸収された位置での分子運動は比較的自由である。(物理吸着系に類似) 2.吸収量が少ないと、いずれの場合もバルクで見られる相転移や融解は見られない。(均一に吸収されていると考えられるので、これは顕著な次元性の表れである) 3.吸収量が多くなると、例えば窒素の場合にはバルクが出現するが酸素の場合には出現しない。(そのバルクは吸収された状態でのバルクである) 4.これまで手がけたグラファイト表面吸着系と比較すると、上記3の現象はいわゆる"ぬれ現象"の挙動を示している。 ごく最近ゼオライト吸収系について実験を初めたばかりであるが、上の現象が媒質の細部によらず一般的に起こるのか興味深いところである。
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