研究概要 |
1.純度の決定 反応後のエステルについて慎重な蒸留操作を繰り返し、本補助金で購入のガスクロマトグラフでエステルの純度を検定した。4回の蒸留でスペクトル測定に十分な純度になることが分かった。 2.単一結晶相の作製 熱分析の結果を参考にし、スペクトルをモニターとして、単一結晶相を作ることを検討した。赤外用セル中では吹付法がキャピタリー法より一段とよく、ラマンではアンプル法で単一結晶が得られること、いずれも適切な温度の充分な時間のアニーリングの必要なことが明らかになった。 3.クロロ酢酸エチル(E-NCA)が示す 1300と1190cm^<-1>付近の強い赤外バンドは、CH_2CI-基の回転による二つの配置によるνC-0とされてきた。一方、臭素同族体ではこの領域に一本のバンドのみ示す。今回E-MCAの3種の重水素化物(d_2,d_5,d_7)を合成し、液体と結晶の赤外とラマンスペクトルを検討した。液体中、d_5体でも二本のバンドを示すが、d_2体やd_7体では期待に反し一本のバンドしか示さなかった。1300cm^<-1>のバンドが結晶化で完全に消え、1340cm^<-1>に新しくバンドの現れることをも考慮して1300cm^<-1>バンドをCH_2CI-CO軸のゴーシュ型CH_2縦ゆれ振動であると結論した。CIC-COO-C_2H_5の二つの回転軸から生じる異性体バンドを明らかにし、クロロ酢酸エステルの回転異性に関する基礎的知見を得た。 4.クロロ酢酸n-プロピル(nP-MCA) 熱分析、^<35>CINQR、赤外・ラマンスペクトルを測定し、4つの結晶相I〜IVのあることを見つけた。塩素原子を含まない酢酸n-プロピルのνC-Cバンドの比較から、nP-MCAのI相では骨格に関しオールトランス型分子で、IIIとIV相ではプロピル末端基のゴーシュ型である分子も存在していると推論した。 5.基盤振動解析がE-MCAとnP-MCAの数種の分子形についてなされ、満足する結果を得た。
|