主としてpーターフェニル、アントラセン、フェノチアジンの高純度単結晶について2波長・2段階励起による固体内イオン化(電子・正孔の生成)を研究した。一重項励起子の吸収スペクトル、光イオン化スペクトルを可視域の広い波長範囲にわたって測定し、この2つのスペクトルの比較から「2段階励起によってつくられる高い(5〜7eV)励起状態はすみやかにより低いエネルギーの(最低励起状態ではない)励起状態へと緩和し、そこで自動イオン化する」という描像をより確かなものにした。対象が結晶であることから予想されたことであるが、信頼性のある結果を得るためには偏光特性をきちんと制御する必要があることがこの研究の過程ではっきりした。励起状態の光吸収、光イオン化はともに強い偏光特性をもっている。このことは中間状態が欠陥や不純物にとらえられた励起状態ではなく、結晶の励起子であることを示している。 フェノチアジンについては励起子の光イオン化とならんで励起子・励起子衝突によるイオン化が見出された。さきにこの物質で見出されている特異なCT状態がこの励起子である可能性があり、さらに研究を進める価値があるが、この関連については現在まだはっきりしていない。 これらの結果の主要部分については王子セミナー「有機半導体40年」の席上、機会を得て発表した。プロシーディングが近く印刷、公表される予定である。
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