固体触媒表面における吸着種の反応性のような動的挙動は一般に昇温分解(TPD)などの方法で、真空中で、調べられている。田丸らは反応物が気相中に共存する場合と、真空中とでは、反応性が著しく異る現象を見出し、Adsorption Assisted Decomposition(or Desorption)と名付けた。この現象はこれまでは知られていなかったが、非常に重要な知見であり、固体表面での動的挙動に関する根本的な問題点である。この現象がどこまで一般的なものなのかについて研究した。今年度はAl_2O_3触媒上における吸着ギ酸イオンと気相中に含まれるメタノールとの反応について研究を行った。触媒は、住友化学製の高純度γ-アルミナ(99.99%)を用い、ガスクロマトグラフ技法を応用して行った。反応炉中の石英管に触媒をつめ400℃で2時間O_2による前処理酸化を行い室温に戻す(Ar分囲気下で)。 触媒上のギ酸を吸着させた後、気相中のメタノール混合して流す場合と、触媒上にギ酸とメタノールとを同時に吸着させた場合の反応性の違いを調べた。前者の場合には生成物中にギ酸メチルが存在するのに対し後者の場合にはギ酸メチルは存在しない。このことからギ酸メチルは触媒上のギ酸と気相中のメタノールと3次元的な反応によって生成し、触媒上に2次的に吸着された状態では反応は起こらないことがわかった。また気相中のメタノールの蒸気圧が高い程ギ酸メチルの生成量が多くなる事も確認した。この事実はAdsorption Assisted Desorption効果を裏付けていることなる。
|