固体触媒の表面における吸着種の挙動は、触媒作用のメカニズム解明の上で、最も重要なポイントである。吸着種の脱離は過去長い間、吸着量のみによってその速度が決まるとされ、この方面のテキストブックにもそのことが述べられて居り、実際に吸着種の脱離速度はいわゆる界温脱離法により、真空中で昇温して測定されている。しかし本研究代表者等は同位体を用いて、実際に吸着が起こっている際における吸着種の脱離速度を測った所、一般に信じられているのと著しく異り、気相中の圧力の関数であることが初めて発見された。この新しい現象(Adsorption-assisted Desorption)が更に発展して、いろいろな反応において共存する気体が、吸着種の挙動、反応性などに如何に影響を与えるかについて広く調べられた。本研究も正にそのような、基本原理がどこまで実際に起こっているのか、どの程度の効果を与えているのかについて調べたものである。ギ酸の分解反応における金属表面上のギ酸イオンの分解反応、メタノ-ルの分解反応におけるMgOやZnOなど金属酸化物の上での吸着種(メトキサイド)の分解反応、その他多くの場合に明かにこの種の効果が認められ、それら一般的にadsorption-assisted proeessesとして、より広く、重要な効果を与えていることが順々に解明されて来た。これまで、全く意識されなかったことが、実は重要な決定的な因子として、触媒反応の進行する中に、その役割りを果たしていることが判明して来て、大きな反響を与えている。
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