研究概要 |
1.1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン(別名プロトン・スポンジ、PSと略す。)の関与するプロトン移動反応を、種々のミセル溶液中で速度論的に研究した。PSの共役酸であるPSHからのOH^-へのプロトン移動過程(kf)は、各種ミセル水溶液中でミセル量の増加と共に著しく遅くなった。PSH^+やOH^-Sがミセル相と水相とに平衡分配されるため、ミセル相、水相および水-ミセル界面の三種の異なる反応場でそれぞれに特有の反応性のもとに反応が起こると考えて定量的に解釈できることを明らかにした。25Cではミセル界面での反応速度定数は、水相でのそれより約100倍小さい。これらの結果は例えば生体系でのプロトン移動反応の解釈や制限などにとって有効な知見を与えるものである。 2.DNAと中性色素であるピリジン-2アゾ-P-ジメチルアニリン(PADA)との結合反応では溶媒にエタノールを添加していくと平衡定数Kは急激に減少した。さらに、水溶液ではエンタルピー変化が△H 0、エタノールのモル分率が0.03の混合溶媒では△H 0であることがわかり、結合様式へのスタッキングによってインターカレーションの寄与が高いことが明らかになった。合成RNAと環状部と側鎖とにそれぞれ正電荷を持つプロピジウムと合成RNAとの結合反応での塩効果をみると、10mMNaClではK=1x10^6M^<-1>、100mMNaClではK=1.1x10^6M^<-1>、100mMNaClではK=4.3x10^5M^-、1MNaClではK=3.2x10^4M^<-1>となった。静電相互作用に基ずいて解析したところ、低塩濃度では結合に関与する電荷が一価であり、高塩濃度では二価であると結論づけらえた。さらに反応速度の測定からも高濃度側で二段階になることが確かめられた。 3.電子冷熱式セルホルダーを用いて核酸一色素系の水溶液の融点測定を行ない、色素が結合したことによる核酸構造の安定化エネルギーが低下することを定量的にし、上記の実験結果と合わせて考察した。
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