研究課題/領域番号 |
63540422
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
辻本 和雄 電気通信大学, 電気通信学部, 助教授 (50017414)
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研究分担者 |
原 黎子 大阪大学, 物理部 (20075138)
大橋 守 電気通信大学, 電気通信学部, 教授 (70015535)
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キーワード | レチナールアナログ / レチノクロム / ロドプシン / 10-メチルレチナール / 円二色性スペクトル / 光異性化 / α-ヘリックス |
研究概要 |
レチナールアナログとして10-メチルレチナールを合成した。この合成目的の理由はアポレチノクロムとの色素成形後、光照射によるトランス-シス異性化で得られる11-シス体が10位と13位のメチル基の立体障害によって特異な性質を持つと期待できためである。 11-シス-10-メチルレチナールは有機溶媒中での全トランス体からの光異性化では全く得られない。しかしレチノクロムを用いる光異性化で初めて単離することができ、そのNMRスペクトルにおける11と12のプロトンの結合定数は12Hzであることがわかり、牛のオプシンとロドプシンを形成することがわかった。また10-メチルレチノクロムの円二色性スペクトルは495nmに、レチノクロムのそれは480nmにそれぞれ同じ正の円二色性を示した。ところが、レチノクロムを用いた光異性化で得た11-シス-10-メチルレチナールは360nmに負の円二色性を示した。不斉炭素を有しない全トランス10-メチルレチナールがレチノクムロを用いる光異性化で光学活性な11-シス-10-メチルレチナールを与えることは今まで知られていなかった。また得られた円二色性が負であることとレチノクロム自身が正であることが対照的である。蛋白質のα-ヘリックスがレチナールの光異性化に関して同じ回転方向に異性化するという従来の考え方はこのレチナールアナログを用いる研究でα-ヘリックスとは逆の回転方向をとって異性化することで改めなければならないことになる。異性化の回転方向の一方性が視覚の機能に対してどの様な影響があるかについては正の円二色性をもつ11-シス-10-メチルレチナールを得ていないので比較実験はできないが、少なくとも負の円二色性を持つアナログでは効率のよいロドプシン形成がみられた。
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