本研究はイオン干渉イオン交換法により希土類元素等類縁元素群の分離方法論の確立を意企したものであり、次の1、2の両面より課題を考究した。1.薄層クロマトグラフ法C-18化学結合型シリカを固定相とし、メタノール乳酸系並びにメタノール-α-イソブチル酪酸系展開液を用いて、全希土類元素、トリウム、ウラン、オキソ酸の挙動を解明した。C-18固定相を修飾するイオン干渉試薬として各種のものを試みたが、いずれも見掛け上の吸着挙動には影響せず、系は逆相型分配クロマトグラフィーの如くに見える。併し、希土についてR_Fの温度依存性は従来の分配型とは異る傾向を示し、カラム的には全く吸着のみられない領域で、展開分離が行われることを認めた。両移動相とも特に中希土分離にすぐれた分解能を示し、乳酸系ではGd-Tb-Dy-Ho-Er-Tm等の隣接希土の分離に成功し、またα-HIBFでもほぼ同様の成果を得た。2.高速液体クロマトグラフ法、上述の薄層法の条件では希土類のみならず、トリウム、ウランも溶出し、分離はできない。よって1-オクタンスルホン酸ナトリウムをイオン干渉試薬としてC-18シリカゲルをダイナミックに修飾しつつ乳酸系で希土分別を試みた。装置は日本分光880-PV型、カラムは日立ODS#3056(4mm×150mm)。粒径は5μmである。日本分光870UV分光検出器を用い、アルセナゾIII呈色錯体をポストカラム反応によって検出した。試料を乳酸錯体(pH3.5)とし、オクタンスルホン酸ナトリウムを0.01Mに保持し、0.05→0.5Mの乳酸のリニアグラジエントにより約30分でSm-Eu-Gd部をのぞく全希土類の分離に成功し、特筆すべき成果を得た。メタノール添加は保持時間を減少させるが、隣接希土の分離度は劣化する。干渉試薬p-トルエンスルホン酸ナトリウムでは乳酸錯体は保持されない。今後Sm-Eu-Gdの分離条件を探究し、イオン干渉イオン交換法の方法論確立に努めたい。
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